はなだ歯科クリニックの花田先生にお伺いした、「私が滅菌の徹底に目覚めた理由」をご紹介します。
2000年に念願の自分の医院を開きましたが、滅菌対策を十分に行ったかというと、「いや、ほどほどにしかやらなかった」というのが正直なところです。
開院したばかりで集患や経営もまだまだ不安定。滅菌対策が大事だと頭では分かっているけれども、お金も人出もまわせない。まぁ、大丈夫さ、正直そう思っている部分がありました。
そんな私が、意識を変えたのは、アメリカの院内感染事例、キンバリー事件を知ってからです。
1987年アメリカ・フロリダ州で起きた歯科医でのHIV感染事件です。
キンバリー・バーガリスさんという当時22歳の女性が、1年8ヶ月間の間に6回、歯科医での治療を受けました。彼女を治療した歯科医師は1年後、HIVで死亡しました。検査の結果、キンバリーさんを含め、合計6人の患者がHIVに感染していたことがわかりました。
これを機に、CDC(米国防疫センター)とADA(米国歯科医協会)は、患者ごとにハンドピースを滅菌することを勧告するに至りました。また、州によっては滅菌措置が義務付けられ、抜き打ち検査を実施、場合によっては罰金・営業停止の処罰がされるそうです。
この事件を通じて、私は歯医者が使う器具がいかに危険なものかということを理解しました。この認識を得て以来、滅菌はコストの問題じゃない、患者のため、スタッフのため、正直言って何よりも、自分と、そして愛する家族のための行為だと考え、滅菌体制を徹底することを決意しました。
この考えは、数年前に受けた、ある健康診断の結果を通じて、自分の中でさらに強まることとなりました。
2006年に健康診断を受けたところ、「C型肝炎の疑いあり。要精密検査」という所見がなされ、目の前が真っ暗になりました。
どこで感染したのか?歯科医院も続けていいのか?家族やスタッフや患者さんに感染させる可能性もある。もしかして、すでに感染させていたとしたら…?と、三日三晩様々なことを悩み続けました。
結果として、再検査を受けたところ「C型肝炎には感染していない」と分かりましたが、三日間の苦悩の中で、私は院内の滅菌の必要性を改めて痛感しました。感染は他人事ではないのです。